[:ja]編集部マガジン&ムービー

鶴見小野編集部員による取材記事や、ワークショップで制作したミュージックビデオなどを公開しています。取材記事では、部員それぞれが気になるお店、取り組み、暮らす人にスポットを当てました。そして2022年。鶴見小野でなんでアート?そんな疑問に答える「鶴見小野編集部通信」をスタートさせています。[:en]Write a short discription on the contents of Tsurumi Stories[:]

想いと装いを縫い合わせる

by 北山 深雪

小杉縫製代表取締役の小杉 清(きよし)さん

JR鶴見線・鶴見小野駅より徒歩10分の小杉縫製さん。本町通商店街で1966年に開業しました。現在もその職人技と実直なお人柄で、なくてはならない縫製の駆け込み寺のような存在です。

父の代からのミシンと共に

創業者で先代の父と同じく東京神田の仕立て屋で修行し、現在は代表取締役の小杉清(きよし)さん、弟の雅(ひとし)さん、清さんの妻の三人で店を続けています。幼い頃より父がミシン掛けをする姿を見て育ち、当時では珍しいドイツ製「PFAFF(パフ)」の黒光りしたミシンと共に父を懐かしく想い出します。

ミシン掛けをする清さんと雅さん

小杉縫製では、こだわりと愛着のあるリーバイスのジーンズのポケットに空いた穴を繕ってほしい、卒業まであと一年で新品を買うのは厳しい学生服のズボンのウエストを5㎝大きくしてほしい、といったさまざまな要望に日々対応しています。ズボンのウエストを5㎝小さくすることもできます。

ポケットの穴を繕う小杉雅(ひとし)さん

長年通う方やご近所の方、最近ではインターネットで調べ初めて訪れる方も。その職人技と気さくなお人柄で頼りにされ、企業からの仕事依頼も引き受けています。

これまで手がけたさまざまな刺繍見本を見せていただきました

「形見を着たい」「自分でリメイクしたい」さまざまな要望を実現

「母が手づくりした形見のプリーツスカートをブレザーにリメイクしてもらいたい」。取材時に見せていただいた作業中の服には穴が空き傷みも多く見られましたが、お客様の熱意に触れ、穴つくろい・柄合わせ・裏地付けなど、持てる技を全て注ぎ込みます。添えられたボタンとブローチも小杉さんの思い遣り。想い出が大切によみがえり、「お客様に喜ばれるのが一番嬉しい」と話す柔和な笑みは温かさを感じます。

プリーツスカートをリメイクしたブレザー

「着物を自分でリメイクしたい。ズボンとベストをつくりたい」。ご近所に住む青年は、ミシン掛けも初めて。それでも大丈夫。小杉さんに教えてもらいながら見事にズボンを完成させ、そのズボンを履きながらベストづくりに励んでいました。

着物を自分でリメイクする鈴木謙太郎さん
雅さんや清さんの作業を見て学びます

子どもたちや商店街の仲間との交流

下野谷小学校の子どもたちがお店を訪問してくれたことも。アイロンやミシンが珍しく、興味を持ってくれ交流した楽しい想い出もあります。

趣味はスキー。スキー場ではリフト終了時間まで滑り続けるほど大好きだそうです。商店街の仲間とスキー旅を愉しむためにも仕事に励んでいる、と笑みがこぼれます。

小杉清さん、小杉雅さん、鈴木謙太郎さん

装いは巡り合い

「お店にある豊富な糸を使い切りたい」。多種多様色とりどりの糸を眺めながら小杉さんの熱い想いがひしひしと伝わります。この糸たちは、どんな生地に出合いどんな人に出会うでしょう。人と糸と生地とのいろいろな巡り合いを縫い合わせてきた小杉さんからは、優しさが滲み出ています。

棚に並ぶ膨大な数の糸。部屋の奥にもまだまだあるそう

目の前のお客様のために、一日一日の仕事に集中し、充実した毎日を送る小杉さん。多くの上質な専用ミシンと共に、立派な刺繍専用ミシンも出番を心待ちにしています。

みなさん小杉縫製さんで、さらに装いを愉しみませんか。


有限会社小杉縫製
鶴見区本町通2-76
9:30〜17:00(日曜休み・不定休)
045-521-6257
洋服のお直し、穴つくろい、かけはぎ、サイズ直し、制服やジーンズの裾上げ、着物や洋服のリメイク、ネーム刺繍など


取材・文:北山 深雪
写真:鶴見小野編集部